ハングタイム・ライターズ

何も見ない日はないのです。何も思わない日はないのです。

ニシグチtenkoノリコフィルムラッシュ

フィルムラッシュ:Tree of Life

お久しぶりです。
徳島県で映画の撮影してました。
準備から撮影までの間、そしてアップしてから今日まで
何だか過ぎ行く日をボンヤリ見送ってました。

そんな日々にあって、久しぶりに映画見たのがこれ、「Tree of Life」。
テレンス・マリックの映画は「こんな映画」って一言で言えない。なんか
イメージや言葉にならない感情がウヨ~って湧いてしばらく気持ち悪くなる、
そんな作品を撮る人と捉えてきましたが、
今回も期待に漏れず、ウヨ~っとさせられました。

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人の人生は人の数だけあるといいますが、テレンス・マリックにかかれば、
全ては「宇宙につながる一つの大河」として表されるもの、それが人生であり、
祖先とつながるルーツであり、一つの家族であり、個である、と言った感じ。
なんだかんだ言って「あなたも私も彼も彼女もみんな繋がってて、途切れない」
と言った事をストーリーじゃなく映像のイメージの連続性の中に
知らしめてみた、という映画でした。

こんな風に要約するのも憚られる。
正直言って、途中で絵が揺れすぎてて三半規管がやられて
吐きそうになってっていう「ポケモン」状態になったりして、見てる間は辛かった。
何の映画だったんだと思いながら数日経って、
なんかとんでもないもの見たかもしれん、と思うようになりました。

こんな風に、動く写真集のような美しいものの連続が
画になってるって作品は、ちょっとないかもしれない。
体調の良いときに限り、見るべし。

ニシグチtenkoノリコフィルムラッシュ

フィルムラッシュ:白いリボン

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ミヒャエル・ハネケ。
ってだけで、何かありそうな期待感を持たせるすごい監督。
ジュリエット・ビノシュが出てるからという理由だけで観た「コード・アンノウン」や
「隠された記憶」の意味不明さに翻弄されたのに、懲りもせず観てしまいました。

鑑賞直後はやっぱり、「え~、まさかこれでエンドタイトル来ちゃうの?」という感想。
なんも解明されず、何も説明されず、時代が、戦争が、やってくるんだぜ、という終り方。

「村の不可解な事件」とか「子供への厳格な体罰が云々」とか、
映画の前情報はほとんど関係なかったんじゃ?
と感じさせるような、もっと説明のつかない不快感が次々と襲い、
ドイツ北部という地理的うさん臭さと、キリスト教的厳格さの嫌悪が
ジワリジワリと画面を覆い尽くして行きます。

いや~、言葉は悪いけど、シリアルキラーとか猟奇殺人とかが頻発する国って、
やっぱりどっか宗教の悪しきお導きが原因なんじゃないの?と疑わざるを得ません。
映画を見てない方は何言ってんだか分からないと思いますが、
私が感じたゾワゾワ感を言葉にすると......
「子供だからって、純真無垢だと決めつけるな」ということを「純真無垢であるが故に、
最も残酷さに迫れる」という表現で一遍の映画の中に観させられた......
という肌感。
そんでもって、そんな子供を培養したのは、生まれながらに持ってる『原罪』という
キリスト教的宗教観ではなかろうか......と。

前回のイスラム教の教えと同様に、宗教の偏執的厳格さの中に、
子供の、大人の、集団の「悪意」を増殖させてしまう一面を見せられました。

宗教がなくても何とかなってる日本で良かった。

2011/01/25/tenko

ニシグチtenkoノリコフィルムラッシュ

フィルムラッシュ:DESERT FLOWER

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アフリカはソマリアの砂漠を生き抜き、ヨーロッパへ逃れてきた一人の少女が、
世界的トップモデルへと駆け上っていく実話を基にした今作。
映画のヒロインは強く美しくなければいけない、ということを実感させられます。

しかも、彼女は古い宗教的因習ゆえに、3歳の頃に女性性器を切除(イタイ!)
されたという経験を持ち、その廃絶のために今もメッセージを発信し続けています。
ちなみに、そうした恐ろしい切除を受ける少女は、今も1日6000人以上いるんですって!
1日ですよ。
日々、そんなことが行われているなんて、早く止めてあげてほしい。
ていうか、そうゆう因習を守り続ける頑な男たちの先っぽを切ってやりたいね。

映画も、ただの成功譚で終わるのでなく、廃絶を広く訴えるためのものでもあります。

世界へ向けてこうしてメッセージを届けることができる映画というメディアは、
ある意味、すごい武器ですね。
映画だけでなく、写真もそうですよね。
実際に、この映画のモデルになったワリスさんも、高名な写真家に見いだされて、
彼の腕と彼女の勇気が世界を動かすことになったことを考えると、ちょっと心が震えます。

1枚の写真や1編の映画が、人の心をつかむという事。
それを信じて映画を作っていきたいと思いました。

2011/01/12/tenko

ニシグチtenkoノリコフィルムラッシュ

フィルムラッシュ:ノルウェイの森

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出ました。

これほど賛否両論が沸騰すること必至の原作の映画化。
正直、私もこの作品を映画化できたら、プロデューサー辞めても良 いと思ってました。
そう言った意味でも、誰に何を言われようと、
この作品のプロデューサー・アスミックの小川さんを尊敬します。
『ワタナベ』役を松ケンにしたのも素晴らしい。
彼ほど、役ごとその世界に連れて行ってくれる俳優は滅多にいないと思います。
と、手放しで褒めるのはこれぐらい。

贅沢に作ってますよ、この映画は。
時代感を出し、四季を追いかけ、ここはこだわる、
というカットを極限まで追求して撮ってます。
究極はビートルズの原曲使用権を買った事。
この1曲分で私なんか映画3本ぐらい作りますよ、とイヤミ言います(貧乏だな)。

しかし...しかし......しかし!
この曲使用の制限って何かあったんでしょうか?
どうして原作の「最後のお弔い」というシーンがないのでしょうか?
シーンとして必要ないと判断したのか、必要なければ、この曲自体が必要だったのか?
大いなる謎。
ここまで何のこっちゃの物語で映画を終らせて良いものでしょうか?

いや、この原作はそれだけじゃないはず。
生命力の固まりのような「緑」と、死に取りつかれた「直子」の対比を、
原希子と菊地凛子に託して良かったのでしょうか?
ベトナム人監督:トラン・アン・ユンの言う事に一切逆らえなかった、
という事情は漏れ聴こえて来るので、
これ以上文句つけるのは関係者に申し訳ないのだけれど、
それって観客には関係ない事でもあるので、どうにももどかしい。
演じた上に文句までつけられる菊地凛子にも申し訳ないのですが、
ホントに......もう......ダメよ、
彼女を直子にキャスティングしちゃ。
確かに妄執に囚われて行く様を演じたのはすごいけれど、
「どうしようもないほど心を奪われる」
という女としての魅力からは遠くないか?
それって私の思い違い?

後、これはどうなってる、あれはどうなんだ、
と言いたい事は山ほどあるのだけれど。
......まあ、いいよ。
どこまで文句つけても、これを手がけた人にはかなわないのだから。

2011/01/05/tenko

ニシグチtenkoノリコフィルムラッシュ

フィルムラッシュ:SPACE BATTLESHIP ヤマト

フィルムラッシュ:SPACE BATTLESHIP ヤマト
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明けましておめでとうございます。
長閑に晴れ上がった東京です。
みなさんは、お正月をどのように過ごされてますか?

お正月は映画、ということで、行ってきました「ヤマト」。
いや、噓。
実は観たのは去年の30日。
何を観て年越しするかってのが結構悩ましい選択だったのですが、
やっぱり話題に乗っとくか......ということで、わざわざ年越しに。

すごいですよ〜。
「ヤマト LOVE」な人が集まって作りました、という映画です。
「波動砲」も「ワープ!」も完璧。
デスラーの伊武雅刀もしぶい!
そこはこだわりどころよね、という所をはずしてません。
そんな「親目線」で観ればとても面白く、ヤマト漫画ファンは見逃せない作品です。

そうゆうの抜きで観たとしたら......、木村君がんばったな、という作品。
ここまで何やっても木村拓哉になる、いや、「にしかならない」という彼は、
ある種、本物かもしれません。
何やらしても「ヒーロー」=「木村拓哉」という存在として
イメージングされてきた希有な俳優(タレント?)です。

その他のいろいろは観た人の感想にお任せするとして、これだけは言いたい。
日本の映画の特にこうしたパニックものでいつも思う事。

「どうしてこの緊急時にそんなにのんびりしてるの?」
呆れるくらい、登場人物の背景を説明したり、気持ちの整理をつけたり、
主要な俳優全員のリアクションを押さえたりと、ほんとうに丁寧な演出で、
ふと『これは今、何中?』と事態を忘れそうになります。
ストーリーとしては必要なのだろうけれど、なぜか洋物の映画では
そんな風に感じたことはないのです。
命の危険にさらされていて、もうこれで今生の別れ、という時の
ハラハラドキドキ感をきっちりキープさせつつクライマックスに持って行ってくれます。

ヤマトの諸君。
君たちの都合で敵は襲ってくれないよ。

2011/01/01/tenko

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