レビュー

考えるのではない。感じるのだとあのヒトは言った。

BOOK

『 ここにも激しく躍動する生きた心臓がある 』

「知ってるー、私、ダライ・ラマ興味あるんですー」と
え、こんな若い女性が!というくらい知名度があるんだよなー。

昨年末来日していたチベット仏教最高指導者。ダライ・ラマ14世。
その時「中国は僧の相次ぐ焼身自殺についてちゃんと調べて
ほしい」とやわらかく訴えていました。

現在、中国政府はかっての文化大革命時代のごとく、中国国内の少数民族に
対し弾圧をおこなってるようにさえ思える。モンゴルしかり。

一切チベットサイドからの情報など入ってこない状態に近い。

文革後の1980年代から中国政府の規制緩和で外国人も多くチベットに入れる
ようになり数々の紀行本とかも出版されました。

その中でぼくの大のお気に入り作家のすばらしい書
『チベットを馬で行く』渡辺一枝 文藝春秋 1996刊
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★こちら単行本。
 タイトルバックはテント地?。モンゴルの友人のイラスト。
 ストレートで清く美しいデザインです。

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★こちら文庫。デザインが簡略化。残念・・。

彼女50歳を過ぎた時に思い立った。
「チベットを馬で旅してみよう」!と。
まさに現代の西遊記。

チベットを、日本を、自分の現在を思いながらてくてく
馬で旅する。端々に彼女の純なやさしい心遣いを
感じながら読むことが出来る。

傑作紀行本です。
後日、彼女が旅したとき同行したモンゴルの青年が椎名宅に
ホームステイした話も椎名さんのコラムで拝見したことがあります。
ほほえましく良いお話でした。
そう,ぼくは椎名ファンでもあります。今気分の「連言葉」は彼に影響されて。
なのである。ワシワシ食うのである。なんてね。

一枝さんは椎名誠さんの奥様。
一度出版記念パーティーでお見かけしたことがありますが
小柄だけど和服の良く似合うやさしくきりっとされた女性。
彼女の文章そのもののような感じでした。

彼女は作家になられる前は保母さんをやられていましたが
その時代の育児教育の本も出されています。
これも良い本ですよ。

話しだいぶそれました。

大好きな渡辺一枝さんが書評で書かれていたのが
この本『 ここにも激しく躍動する生きた心臓がある 』。
トンドゥブジャ奢 チベット文学研究会編・訳 勉誠出版
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「文革後のチベットを夜空の流星のごとく駆け抜けて消えた」
38歳で自らの命を絶ったチベット人作家のチベット語による初の書。

こんな見出し。読まずにはおられません。

編集・翻訳は中国大陸史を研究テーマとした大学の教授たちで
構成されるチベット文学研究会。

冬の夜長に、是非。
一枝さんの方も是非。

井上亀夫  kameo a.k.a. prince of fool's