レビュー

考えるのではない。感じるのだとあのヒトは言った。

BOOK

ボブ・ディランという男

デイヴィッド・ドールトン(David Dalton)によりついに
上梓されたボブ・ディラン研究本。
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『ボブ・ディランという男』
デイヴィッド・ドールトン=著 / 菅野ヘッケル=訳
(A5判 / 448頁 !!/ 定価3,150円)
シンコーミュージック・エンタテイメント刊


宣伝文
 ~ディラン本人のインタヴューやレコード、自伝や映画をはじめとする、
  あらゆる資料を徹底的に調べ上げ、ボブ・ディランの"真実の姿"に
  迫った入魂の一冊!~

正にその通り!

著者のデイヴィッド・ドールトンは元『ニューヨーク・タイムズ』
ベストセラー作家、『ローリング・ストーン』誌の創刊時編集者。
まさに同時代の表現者。
時代の変革者ディラン、謎に満ちた彼にここまで迫ったのは
デイヴィッドだけ。
原書の訳者は日本のディラン研究第一人者・菅野ヘッケル。
何を隠そうヘッケルは吉田カツ一門の同士。
よく語り合ったものです。
ディラン来日時は必ず彼が通訳者になるなど
日本ではいつでも一緒。
よかったねヘッケル。今度はあなたの研究本の上梓、待っています。

ディランは自身のライブはすべてと言っていいほど
録音し、コレクションしているそう。
メタリカが自分たちの海賊版を買いあさっているのとは
ちょっと次元が違います。
そのコレクション、発売してくれないかなー。


井上亀夫  kameo a.k.a. prince of fool's

BOOK

『 ここにも激しく躍動する生きた心臓がある 』

「知ってるー、私、ダライ・ラマ興味あるんですー」と
え、こんな若い女性が!というくらい知名度があるんだよなー。

昨年末来日していたチベット仏教最高指導者。ダライ・ラマ14世。
その時「中国は僧の相次ぐ焼身自殺についてちゃんと調べて
ほしい」とやわらかく訴えていました。

現在、中国政府はかっての文化大革命時代のごとく、中国国内の少数民族に
対し弾圧をおこなってるようにさえ思える。モンゴルしかり。

一切チベットサイドからの情報など入ってこない状態に近い。

文革後の1980年代から中国政府の規制緩和で外国人も多くチベットに入れる
ようになり数々の紀行本とかも出版されました。

その中でぼくの大のお気に入り作家のすばらしい書
『チベットを馬で行く』渡辺一枝 文藝春秋 1996刊
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★こちら単行本。
 タイトルバックはテント地?。モンゴルの友人のイラスト。
 ストレートで清く美しいデザインです。

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★こちら文庫。デザインが簡略化。残念・・。

彼女50歳を過ぎた時に思い立った。
「チベットを馬で旅してみよう」!と。
まさに現代の西遊記。

チベットを、日本を、自分の現在を思いながらてくてく
馬で旅する。端々に彼女の純なやさしい心遣いを
感じながら読むことが出来る。

傑作紀行本です。
後日、彼女が旅したとき同行したモンゴルの青年が椎名宅に
ホームステイした話も椎名さんのコラムで拝見したことがあります。
ほほえましく良いお話でした。
そう,ぼくは椎名ファンでもあります。今気分の「連言葉」は彼に影響されて。
なのである。ワシワシ食うのである。なんてね。

一枝さんは椎名誠さんの奥様。
一度出版記念パーティーでお見かけしたことがありますが
小柄だけど和服の良く似合うやさしくきりっとされた女性。
彼女の文章そのもののような感じでした。

彼女は作家になられる前は保母さんをやられていましたが
その時代の育児教育の本も出されています。
これも良い本ですよ。

話しだいぶそれました。

大好きな渡辺一枝さんが書評で書かれていたのが
この本『 ここにも激しく躍動する生きた心臓がある 』。
トンドゥブジャ奢 チベット文学研究会編・訳 勉誠出版
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「文革後のチベットを夜空の流星のごとく駆け抜けて消えた」
38歳で自らの命を絶ったチベット人作家のチベット語による初の書。

こんな見出し。読まずにはおられません。

編集・翻訳は中国大陸史を研究テーマとした大学の教授たちで
構成されるチベット文学研究会。

冬の夜長に、是非。
一枝さんの方も是非。

井上亀夫  kameo a.k.a. prince of fool's

BOOK

『 毛のない生活 』山口ミルコ著 ミシマ社刊

『 毛のない生活 』山口ミルコ著 ミシマ社刊

国の枠を超えてロックフェラーなどの巨大な財閥が世界を牛耳っているように
組織がますます巨大化していっているのが21世紀です。

すべての組織が防衛のために巨大化するのが今世紀、と思われがちですが
マキシマム=ミニマム。かならずその逆もまた出てくるんですねー。
その、存在意義は本当に重要です。
1975年生まれの三島邦弘氏が大手の出版社になじめず世界放浪の旅の後
2006年に立ち上げた自由ゲ丘の小さな一軒家の出版社「ミシマ社」。

この画期的な出版社のことはまた後日。

で、今日はこのミシマ社より刊行した『 毛のない生活 』の著者
山口ミルコさんのことを少々。

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彼女は飛ぶ鳥も落とすくらい有能で勢いのある編集者でした。
ある時体調の異常を訴え病院へ。
そこでガンであることの宣告を受ける。
早々に始まった放射線治療で頭の毛が抜け落ちた自分。
その事実を冷静にとらえ文章としたのがこの本です。

タイトルが流石です。
装丁が、ちょっと古臭いぞ成一さん。

この本は興味ある方は読んでいただくとして今日は彼女のミシマ社の
ウェブ雑誌「平日開店ミシマガジン」
(実はひそかにぼくのhung time timesのライバルウェブマガジンと思っています)
に連載している
「ミルコの六本木日記」
http://www.mishimaga.com/mirko-roppongi/を紹介しておきます。
ぼくたちは日常でただ健康であることの有り難さに気づいていません。
なかなか難しいですよねー。
彼女の文章を読むとぎゅうと抱きしめてあげたくなるくらい切なくなります。
また、日々の生活を送れることの感謝の気持ちが沸いてきます。

おっと、もう優秀な編集者の手の中だ。

ウェブ連載の「第33回 豆腐屋デート」は読み終わった後涙ボロボロです。

恐るべし、山口ミルコさん。


井上亀夫  kameo a.k.a. prince of fool's

BOOK

『 あんぽん~孫正義伝』

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『 あんぽん~孫正義伝』佐野眞一 小学館刊

凄い本が出版されました。

今、世界が一番注目している日本人。孫正義。
国がおこなうべき「自然エネルギー利用」事業を
先頭に立って進めている人物。

民主主義社会に強い個性のある独裁的リーダーは
不要と思うけど、この人は気になる。

そんな孫正義本人、彼自身の生い立ち、ルーツにまで
踏み込んだのがルポライター佐野眞一。

「クラッシュ」
「だれが本を殺すのか」
「日本のゴミ」
「あぶく銭師たち」
「津波と原発」
「阿片王」
「怪優伝 三国連太郎」

などなど凄いルポルタージュを書かれている
佐野さんだからこそ出来た一冊。

この本も当然ですが
へたな小説、映画よりはるかに面白い(失礼)。

この本の「あんぽん」は日系三世の孫さん昔の日本名
「安本」からとっている。
よく本人=孫さん、に納得させたものです
(「あんぽんたん」と子供の頃からかわれていたそう)。

彼が安本から孫へと変名、ルーツへのこだわり
のくだりなど息を呑む面白さです(失礼)。

ぼくたちも、人のことに感心している場合ではありません。
地球のこと、日本のこと、またその近未来のこと
すぐ先に待っている日本経済に対する決断等々・・、
少し真剣に向き合いましょう。

カメオ・リポートでした。

必読です。

金子由香里「時は過ぎてゆく」
http://www.youtube.com/watch?v=coiXF-PqgGQ
ソフトバンク、よくぞ使ったこの曲。

井上亀夫  kameo a.k.a. prince of fool's

BOOK

『 ナポレオンのボタン 』

化学の本だけど21世紀以降
自然科学物質もさることながらも化学化合物が
ぼくたちの生命線となることは確実。

それはミツバチの重要性に匹敵する。


ナポレオン軍がロシア侵攻時に兵隊の外套のボタンが
錫(すず)製だったのが敗因だったという説からとった
この本のタイトル、洒落ています。

錫は温度が下がると粉々になってしまい外套が留められなくなり
兵(人間)が寒さにやられることとなった。

こんな史実をしるだけでも(たぶん事実)読んでみたくなるでしょ。


なお、日本タイトルは同社のロングセラーシリーズのように
お堅い科学本然としています。

冬の夜長に、是非。

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★『スパイス、爆薬、医薬品』中央公論社


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