ハングタイム・ライターズ

何も見ない日はないのです。何も思わない日はないのです。

ニシグチtenkoノリコ

ドラマ旬報:【南極物語】

nankyokupastedGraphic.jpg
画像は、高倉の健さんが主演した映画の画像ですが、
この10月クール、
TBSの日曜21時からキムタクの「南極物語」が始まりました。
みなさん、ご覧になりました?本家の映画を。
もうねえ、映画は感動するよ。
犬に。
生きてたんだもの!あの南極の極限で。

ところでドラマ。
キムタク主演ってことで、早くも嫌な予感が......。
「生きてた!」という感動を犬にじゃなくキムタクが攫って行きそうで怖い。

「華麗なる一族」のどっか満たされない、できるのに認められない男、
という設定はキムタクにピッタリですが、
今回の東大の地質学の先生ながら、
過去にいろいろあったがために、本来の職分ではない「犬担当」で
南極に 連れて行ってもらえる男と言うキャラクター。
最初から「犬担当」で良かったんじゃ?とは思いながら、
いろいろ 背負わせた方が、後々の過酷な体験を
乗り越える設定でも都合がいいと思ったのでしょう。
でも、その分、キムタクに早くも感情移入できず。

総理として日本を救い、一族の繁栄に貢献し、宇宙を守り、
今度は 敗戦国日本の希望を背負う。
いつの間にか、日本の「良心」を体現する俳優になったキムタク。
ハリウッドで言うと、誰?
トム・クルーズ?
なんか、似てる......。


ニシグチtenkoノリコ

フィルムラッシュ:人生、ここにあり!

jinseipastedGraphic.jpg
イタリアには精神病院なるものがありません。
それは、なぜか?
その答えは、この映画、なんと実話を元にしたお話にあります。

精神病院と言えば、とりあえず隔離して人に迷惑かけんなよ、
的な扱いで一丁上がりとされている人たちが収容されているイメージ。
ところが、イタリア人とはさすがに奇抜な民族性で。

「誰でもどこかオカシくて、必ず何かを持っている」

という思想のもと、あんたらでもできることがある、と仕事を「作り」、
「結果を出す」という至極単純に見えて、ほとんどの人が挑戦しようと
しなかった事をやってのけた人たちのお話です。

どんな仕事で何をやったかは別にして、世界中、誰でも思う事は
「仕事がある」=「生きる」ことに繋がる事なのだなあと言う事。

ここらで自分の仕事について、立ち止まって考えたいなと思わされる、
ハッピーな映画です。
そして、人間であることの哀しさや可笑しみなどについてもね。

ニシグチtenkoノリコ

フィルムラッシュ:天国からのエール

tengokukaranoale.jpg

バンドに夢をかける高校生たちのために私財を投げ打って
スタジオを作り応援するとともに、人生に必要な事を教え
てくれた実在の男の物語。

初監督、初プロデューサーがタグを組んだ今作。
プロデューサーがちょっとお知り合いだったりするもので、
フィルムラッシュも控えめか......というとそんなわけはない。

阿部ちゃん演じるお弁当屋さんは、とっても良い人、熱い人。
演技も泣けちゃう所があったりしてよく撮れてます。
でも、高校生たちがロックバンドっていうか
アイドルバンドなミュージックで、桜庭ななみよぅ...って感じ。
ギターの男の子が松潤みたいでカッコ良くて、
できれば彼で見たかったな、高校生パート。
物語もギターの子の苦悩、というのが冒頭に出てきたりして、
「オッ、こいつが第2の主役か?」と期待できたのだけど、結局、桜庭ななみ。

かわいいですよ、彼女。
デビューしたとき、サイン第1号、くれたよ。
でも、なんかそぐわない。
そう、ロックバンドには持ってたい「反骨」が見えないんです。
どっか、媚びてる。
ギターの子の方がバンドやってやる!という気迫が伝わってきます。
キャラ設定がどうこうという以前の、
本人がもっている資質のようなものだと思うけど。

ストーリーも実話をベースにしているという前提があるにせよ、
やっぱり「映画にするならでは」の人間ドラマを見たいなと思いました。
「大人がだらしないから、うちら苦労してんだよ」
という子供の叫びを感じて立ち上がった大人と、
大人の想いに素直になれなくて反発する子供。
そういうところがぶつかり合いながら一つの形になっていく、
いう過程がどっか弱くて、というかほとんどなくて、
聞き分けの良い子供に大人ががんばって手を貸しちゃう、
そんでそれにありがたく乗っかりました、というバンドがプロになれたところで、
良かったな、うれしいよな、とは思えないのです。
大人の事情や大人の思いを、大人の間だけで語ってしまってるのも、もったいない。
奥さん役のミムラの見せ場も必要だったのかもしれないけど。

阿部ちゃん演じる男がどんだけのことをしたか、
そりゃもう、まねできない、という事実は伝わります。
モデルとなった仲宗根さんに、合掌。

ニシグチtenkoノリコ

フィルムラッシュ:Tree of Life

お久しぶりです。
徳島県で映画の撮影してました。
準備から撮影までの間、そしてアップしてから今日まで
何だか過ぎ行く日をボンヤリ見送ってました。

そんな日々にあって、久しぶりに映画見たのがこれ、「Tree of Life」。
テレンス・マリックの映画は「こんな映画」って一言で言えない。なんか
イメージや言葉にならない感情がウヨ~って湧いてしばらく気持ち悪くなる、
そんな作品を撮る人と捉えてきましたが、
今回も期待に漏れず、ウヨ~っとさせられました。

pastedGraphic.jpg
人の人生は人の数だけあるといいますが、テレンス・マリックにかかれば、
全ては「宇宙につながる一つの大河」として表されるもの、それが人生であり、
祖先とつながるルーツであり、一つの家族であり、個である、と言った感じ。
なんだかんだ言って「あなたも私も彼も彼女もみんな繋がってて、途切れない」
と言った事をストーリーじゃなく映像のイメージの連続性の中に
知らしめてみた、という映画でした。

こんな風に要約するのも憚られる。
正直言って、途中で絵が揺れすぎてて三半規管がやられて
吐きそうになってっていう「ポケモン」状態になったりして、見てる間は辛かった。
何の映画だったんだと思いながら数日経って、
なんかとんでもないもの見たかもしれん、と思うようになりました。

こんな風に、動く写真集のような美しいものの連続が
画になってるって作品は、ちょっとないかもしれない。
体調の良いときに限り、見るべし。

ニシグチtenkoノリコ

フィルムラッシュ:白いリボン

126419796787116129583.jpg
ミヒャエル・ハネケ。
ってだけで、何かありそうな期待感を持たせるすごい監督。
ジュリエット・ビノシュが出てるからという理由だけで観た「コード・アンノウン」や
「隠された記憶」の意味不明さに翻弄されたのに、懲りもせず観てしまいました。

鑑賞直後はやっぱり、「え~、まさかこれでエンドタイトル来ちゃうの?」という感想。
なんも解明されず、何も説明されず、時代が、戦争が、やってくるんだぜ、という終り方。

「村の不可解な事件」とか「子供への厳格な体罰が云々」とか、
映画の前情報はほとんど関係なかったんじゃ?
と感じさせるような、もっと説明のつかない不快感が次々と襲い、
ドイツ北部という地理的うさん臭さと、キリスト教的厳格さの嫌悪が
ジワリジワリと画面を覆い尽くして行きます。

いや~、言葉は悪いけど、シリアルキラーとか猟奇殺人とかが頻発する国って、
やっぱりどっか宗教の悪しきお導きが原因なんじゃないの?と疑わざるを得ません。
映画を見てない方は何言ってんだか分からないと思いますが、
私が感じたゾワゾワ感を言葉にすると......
「子供だからって、純真無垢だと決めつけるな」ということを「純真無垢であるが故に、
最も残酷さに迫れる」という表現で一遍の映画の中に観させられた......
という肌感。
そんでもって、そんな子供を培養したのは、生まれながらに持ってる『原罪』という
キリスト教的宗教観ではなかろうか......と。

前回のイスラム教の教えと同様に、宗教の偏執的厳格さの中に、
子供の、大人の、集団の「悪意」を増殖させてしまう一面を見せられました。

宗教がなくても何とかなってる日本で良かった。

2011/01/25/tenko

カテゴリー

アーカイブ