ハングタイム・ライターズ

何も見ない日はないのです。何も思わない日はないのです。

トゥジュール

♡<Opéra>

長く伝えられてきた食べ物には淘汰されなかった理由があります。
その土地でそのお菓子がなぜ育ったのか等の文化的背景まで知ること で、その菓子の味わいが幾重にも深まります。

相手の文化に敬意を払い、自ら学んでいく、、、隠れたエピソードを知り、存在の意味を知ると、その姿はぐっと 違って見えてくる······。

ルールの分からないスポーツを見ていても、何にもおもしろく ありませんが、ルールを知ることでその楽しみは倍増します。
知れば知るほど「もっと、もっと』楽しくなるはずです。

食べ物を提供するだけでなく、その背景までお伝えすることも僕たちの大切な仕事だと思っています。

そんなこんなで、今回は「オペラ」というお菓子を紹介します。

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<Opéra>

オペラはパリの「ダロワイヨ」のオーナー、ガヴィヨン氏が1954年に売り出したといわれています。
そのもとになったのはガヴィヨン氏の親戚である、ポール・ビュガ氏が買い取った「クリシー」という名店で1920年につくられた「クリシー」呼ばれる菓子だとか。

今ではパリを代表する菓子であるかのように、どこの店でも見られる定番になってます。
日本でも、自由が丘や銀座のダロワイヨのショーウィンドーには必ず並べてありますし、たくさんのお菓子屋さんで作られているのでご存知の方も多いと思います。

オペラは次の要素が層になっています。

・コーヒー風味のシロップを染み込ませたビスキュイ・ジョコンドと呼ばれるアーモンド風味の生地
・コーヒー風味のバタークリーム
・ガナッシュ(いわゆる生チョコです)
・そして表面はオペラ座をイメージした金箔などを飾ったチョコレートベースの豪華なデコレーション。

7層からなる重厚な佇まいは、まさにパリのオペラ座を彷彿とさせます。

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<パリ:オペラガルニエ>

とはいえ、バタークリームひとつとってもつくり方はさまざま。
こってりしたもの、あっさりしたものから、水分の多いもの、糖分の少ないもの。
またコーヒーの風味もインスタントコーヒーを使うこともあれば、コーヒー豆から抽出する場合もある。
チョコレートに何を選ぶか、シロップの量の多少・・・・。
これらの要素として何を選択するかによって味わい、食感が変わってきます。
コーヒーとチョコレートのみごとなバランスがオペラの身上といわれますが、そのバランスをどう解釈し、どう表現するかはそれぞれの作り手で違ってきます。

<コーヒーとチョコレート、2つの風味がひとつになった味わい>
生地の焼き具合、シロップの打ち方、クリームの配合、グラサージュのかけ方・・・
ひとつひとつの仕事を丁寧に積み重ねる事で求める味に近づけていきます。
生地はしっかりとミキシングをし、シロップをたっぷり吸い込みつつ食べると歯ごたえがあり、しかも口溶けのよいものに焼き上げます。
僕が作るオペラは、シロップにはコニャックをきかせて、コーヒーの風味をより一層高めています。
組み立てた後、一晩ねかせて一体感を醸しだします。
それぞれしっかりとした味わいのパーツを組み合わせますが、どれひとつ突出させることなく全体をまとめあげることに心を砕きます。

余計な飾りを削ぎ落としたエレガントな容姿と重厚な味わいの格式高い銘菓です。

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